コラム〜と麦

他分野で活躍する各業界のエキスパートが其々の目線で麦を語ります。

めくるめくおかずパンの世界。vol.1

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関口 将 有限会社ピークロード(マーケティング・プランナー|ワークショップ・デザイナー|フォトグラファー)

日本ならではのパンの文化ってなんだろう。

パンの食文化というのは非常に多様性があって、世界のさまざまな国で日常生活の中にパン文化が根付いていますね。

個人的な体験で思い出すのは、初めて訪れたパリの街で右も左もわからずにキョロキョロしていたぼくの前を長いバゲットを自転車の荷台に突っ込んで颯爽と通過したパリジェンヌとか、ドイツの片田舎のホテルの朝食でたくさんのジャムとハード系のドイツパンがものすごく素朴でおいしかったこととか、アメリカのダラスで初めて出会った鬼のように大きなハンバーガーとか。

今となっては特に驚かないけれど、若かりし頃に海外で初めて出会ったカルチャーショックは今でも心の中に残っています。

そんなことを考えていたら、じゃあ日本ならではのパンの文化ってなんだろう。
なんてことを改めて思ったわけです。

昭和35年、1960年生まれの私。
そう、映画「三丁目の夕日」の世界がわかりやすいかもしれません。
朝の食卓にパンが並ぶ家はほとんどなくて、ぼくの家でも白いご飯と味噌汁が定番でした。
家庭では米食が一般的な一方で、小学校の給食はむしろ米飯給食ではなくてパン。
牛乳、食パン、小さな四角いマーガリンが基本セットだったように思います。もちろん地方によっても違うとは思いますが。

正直なところ、そんな思い出は50年近く前のことなので、どんな給食メニューだったのかは正確に思い出せなくて、記憶の中で霞がかかってしまっていて、まるっきりホワイトアウトみたいな状態なのですが、唯一はっきりと、例えて言えばまるで4K画像のように鮮明な思い出として記憶に残っているメニューがあります。

それは、揚げパン。

コッペパンを油で揚げて、ザラメ砂糖をふんだんにまぶした、香ばしさと砂糖の甘さが最高に美味しい揚げパン。

給食=揚げパン。
給食=なんといっても揚げパン。

そんな太くて短い記憶の回路が、揚げパン以外の給食メニューの記憶を全てホワイトアウトさせているのかもしれません。

ちょっと調べてみると、揚げパンの発祥は昭和29年頃。東京都大田区の小学校の調理師さんが「高温の油であげたパンなら学校を休んだ子供たちにも美味しいまま届けることができる」と考えて開発したメニューとか。
なんとも温かな開発秘話。
子供の頃はそんなことも知らずにバクバク食べてました…。

揚げパンに近いものでは、ハワイのマラサダとか、これはちょっとドーナツに近い感じがするのですがフランスで生まれたベニエとか、やっぱり好きです。
機会があればお試しください、揚げパン好きなら確実にはまります。

こうした「ひと手間かけたパンのメニュー」は、日本では「菓子パン」とか「おかずパン」とか「調理パン」とか言われていますよね。
あんぱん、焼きそばパン、コロッケぱん、クリームパン、カレーパン。
どれも小さな頃から食べて親しみのある、アニメの「アンパンマン」にも登場するようなパンたち。

こうしたおかずパンにどんな思い出があるのかが気になって、アンケート調査をかけてみました。

全国から集まった500名の声。
アンケートでの問いかけは「小さな頃の思い出に残っている菓子パン、おかずパン、調理パンを教えてください」です。

まずはぼくと同年代60代のみなさんの声をテキストマイニングという分析手法で可視化してみました。

※分析ツール:ユーザーローカル

60代|思い出のおかずパン

60代|思い出のおかずパン

真ん中に燦然と輝く「揚げパン」の4文字。

やっぱり、揚げパン。

揚げパンの思い出には、こんなエピソードが添えられています。

  • 揚げパン。給食のメニューで美味しかった。(埼玉県|女性|60代)
  • 給食の揚げパンが甘くて好きでした。(東京都|女性|60代)
  • 給食でたまに出された、コッペパンを揚げて砂糖をまぶしたパンが美味しかった記憶があります。(埼玉県|男性|60代)
  • 普段のコッペパンは余り美味しくなかったのだが、砂糖をまぶした揚げパンだけは美味しくて楽しみだった。(滋賀県|男性|60代)
  • 給食で時々出た揚げパン。砂糖がまぶしてあって、皮がカリカリしていておいしかった。(愛媛県|男性|60代)
  • 揚げパンの思い出は給食の思い出。

    揚げパンの周りには「コッペパン」「カレーパン」「焼きそばパン」「メロンパン」「アンパン」が並び、その間に給食、学校給食という言葉がありますね。
    60代のわたしとしては非常に懐かしい結果です。

    では、気になる他の年代も同様にみていきましょう。

    50代|思い出のおかずパン

    50代|思い出のおかずパン

    アンケート結果が語っています。
    「おいおい、焼きそばパンを忘れちゃいけねーぜ。」
    「揚げパンもいいけど、おいらの世代といえば焼きそばパンだぜ」。

    50代の「焼きそばパン」への意見を聞きましょう。

  • 焼きそばパンが思い出に残っている。なぜならば親しい友人と楽しく美味しく食べたことが思い浮かぶからである。(埼玉県|男性|50代)
  • 部活前には焼きそばパン。(京都府|男性|50代)
  • やっぱり焼きそばパン。学生の頃、部活終わりに食べた美味しさが忘れられない。夕食迄の腹持ちが良かった。(兵庫県|男性|50代)
  • 焼きそばパンは、部活の味。

    40代、30代と続けてみていきましょう。

    40代|思い出のおかずパン

    40代|思い出のおかずパン

    30代|思い出のおかずパン

    30代|思い出のおかずパン

    とても意外だったのは、30代以上の全ての世代で「給食の揚げパン」の思い出が、ものすごく大きなものであること。

  • 学校の給食で特別な日に出てた揚げパン。通常の時はめったに出なかったので、揚げパンが出た時は嬉しくてテンションが上がりました。(埼玉県|女性|30代)
  • 給食で出てくる揚げパンが好きでした。恥ずかしくておかわりに行けませんでした。(大阪府|女性|30代)
  • 小学生の時の給食にでてきた「きな粉のついた揚げパン」を食べるのがすごく好きだった。休みの子がいて余ると、ジャンケンして勝者がもらうのがルールだった。(三重県|女性|30代)
  • 揚げパンの思い出は、友だちと一緒に過ごした学校での大切な思い出なんですね。

    揚げパンという給食メニューはなんだか懐かしい響きがありますが、現在でも子供たちに大人気のメニュー。きな粉味、ココア味、アーモンドまぶしなどのバリエーションもあるようです。

    揚げパン

    いろんなおかずパンの話を書こうと思ったら、揚げぱんの思い出話になってしまいました。
    次回はその他のおかずパンのお話をしましょう。

    めくるめくおかずパンの世界。

    つづく。

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