みなさんは『麦』にどのような印象をお持ちですか?
麦、小麦、燕麦、鳩麦、黒麦、蕎麦…なんだか麦という漢字がつくものは全部同じように思えますが、実はその分類は多岐にわたります。
今回は大麦を中心に、お話をスタートしますね。今から約1万年前の新石器時代に栽培が始まったと言われている小麦はパンや麺類に欠かせない存在ですが、大麦も世界最古の穀物の一つといわれ、小麦同様に1万年ほど前から西アジアから中央アジア(現在のイラク付近)で栽培されていたという記録があります。一説には日本では大麦が先に伝承し、その後に続く麦が小麦になったとか。いずれにしても、過去から現代まで栽培が続いている『麦』にはたくさんの価値と可能性がありそうです。
一見なじみのない燕麦や黒麦の健康効果が裏付けされて「オーツ麦」や「ライ麦」として一気に注目されるようになり、オーツミルクやオートミールがちょっとオシャレでイマドキの存在に感じられるようになった今日この頃。大麦ももっと注目されても良いはず!!
主食にもなるこの『麦』たちの健康効果、みなさんは積極的に日常に取り入れて活かしていらっしゃいますか?
ある夏の日の薬膳料理教室で大麦粥を提案した時の事、人生経験値の高い参加者が多いこの講座では『麦はね。。。チョット。』と、渋い顔の方がチラホラ。お話ししてみると『子どものころ、あの線のある麦はボソボソして嫌だった』と!!粒の真ん中に黒い線(黒条線)があるのは大麦の特徴で、圧扁ローラーで押しつぶして吸水率をアップする加工を施した押し麦はぺったんこ。お米の代用品のように麦飯を食べた記憶が今でも嫌なイメージとして残っていると。。。
健康効果があることと、実際に活用することが別なのは理解できます。でも、ここは手軽に健康効果を取り入れるチャンス!!薬膳において大麦は清熱止渇で、熱を冷ましてのどの渇きを止めてくれると言われています・・・と説明しながらデモンストレーション。実際に使った麦はもち麦と言われるタイプの大麦で、はと麦と山芋も加えて粥にしました。
●材料――――――――――――
米40g 大麦10g はと麦10g 山芋20g 水1000ml 陳皮少々
●作り方――――――――――――
①はと麦を一晩水に浸けておく。山芋はさいの目に切っておく。
②米、大麦を研ぎ、水に浸けておく。
③鍋に①②水を入れ、強火で加熱する。
④沸騰したら弱火で30~40分加熱する。
⑤陳皮をふる。
結果、『プチプチした食感』『線が気にならない』『麦が丸い』などの言葉とともに『美味しい』をいただき、講師の私は心の中でガッツポーズ。過去の鮮明な記憶は言葉では解消できませんが、美味しい料理の体験で、イメージが素敵にアップデートしていただけると信じています。
加工法に合わせた品種改良も進み、近年では特に機能性もプラスされている大麦。手軽に取り入れられて美味しい料理が実現できれば鬼に金棒、食物繊維で腸内環境改善できればリピート間違いなし。栄養価を数字で表現することも大切ですが、夏の薬膳を切り口とした『麦』ファン獲得作戦は現在も進行中です。
大麦粉が手に入れば、大麦100%で蕎麦がきのようにつくる大麦がきは極めて簡単。こちらもレシピ無しですぐにつくれる一品です。
大麦は変幻自在!!
麦飴やビールや焼酎の原料。麦芽を餌にして発酵させています。
もっと身近で見えるカタチで登場するのは、夏に欠かせない麦茶。これも清熱効果を考えれば理にかなった飲み物といえます。
料理で最もなじみがあるのは、麦飯にとろろをかけた麦とろではないでしょうか。6と16の語呂合わせで6月16日が麦とろの日と制定されていますが、季節柄消化の良いとろろを使い食欲不振を防ぎ夏バテ予防する意味でも興味深いですね。日々のおみそ汁に欠かせない麦味噌は地域性があり、米味噌エリアの方にはなじみがないかも知れませんが、昨年麦味噌が味噌と名乗ることできなくなるかも…とハラハラする論争がありました。結局、麦味噌も味噌の名称の使用が可能となり一件落着。私にとって麦味噌のつぶつぶは幼い頃から見慣れた形状で食べ慣れた懐かしい味、本当に良かったとホッとしました。
子どもの頃おやつに登場したのは、はったい粉。食物繊維が多いと言われ、ビタミンB₁を多く含み疲労回復にも良いとされるだけでなくむくみを取るのにも効果的。牛乳や麦茶と一緒に食べた子供の頃の美味しい記憶は、不変で絶対的な存在です。
そして大人になった私の前に、素材として大麦粉が現れました。粉としては小麦と同じように見えるけれど、グルテンの含まれていない大麦。米粉のように使うことが近道なのか、もっと何かできないか。研究も進み、大麦の種類と料理の相関関係を少しずつ理解し面白くなってきました。
もっと簡単に、小麦粉や米粉と同じように料理するにはどうすれば良いかに頭を悩ませる日々ですが、一方でその組み合わせの楽しさに魅入られています。
今は、この楽しさをみなさまにお伝えする係としてレシピを作る日々ですが、一人でも多くの方に大麦を身近に感じていただけるように発信したいと思っています。
次回は、これら大麦活用ミッションのお話です!!