コラム〜と麦

他分野で活躍する各業界のエキスパートが其々の目線で麦を語ります。

大麦と腸活

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重野佐和子 腸活料理研究家

はじめまして。腸活料理研究家の重野佐和子です。
「麦と腸活ってどんな関係?」そう思われた方もいるかも知れませんね。
今回は腸の視点から、麦を見ていきたいと思います。

私が腸活をはじめたのは、大腸がん手術きっかけです。

手術前は便秘知らずだったのにガンコな便秘症になり、便秘薬を常用する日々が続きました。
月日がたち腸の動きが少し改善された頃、「薬をやめたい!腸を健康にしたい! 」ムクムクとこの想いが膨らみ、おなかに良いものをもっと食べよう!!と決意。

最初にトライしたのは食物繊維たっぷりな玄米です。柔らかく炊いてよ〜く噛んで食べました。
でも当時の私には消化の負担が大きく、腹痛をおこしてばかり、、、。そんなとき「消化が良いし便秘に効くかも♪」と友人に勧められたのが、麦ご飯です。

早速、お米に押し麦を少し混ぜて炊いてみました。

麦ご飯は確かに消化が良く、必死に噛まなくても腹痛は起きずひと安心。そこで少しずつ押し麦を増やし毎日食べることに。すると友人の言葉通り、麦ご飯は私の便秘に効果を発揮! 小さな希望が膨らみました。

 

ある日「押し麦って一体ナニモノ?」と、ふっと思いました。

知っているのは大麦の仲間ってことくらい。調べると、元は平たい形ではない。麦の中まで浸水しやすく、ふっくら炊き上げるため、精麦後に蒸してプレスしてペッタンコにしているそう。
「だから消化が良いのか!! 昔の人はすごい」と感嘆しました。

大麦の食物繊維は穀物の中でトップクラス。なのに消化が良いのは、不溶性より水溶性食物繊維が多いからでした。水溶性は腸内の水分とつながってゼリー状になり、腸の壁を優しく刺激して排便を促します。腸内細菌のエサとなり発酵・分解され、腸内環境の改善にも貢献します。

一方の不溶性は、腸内で水分を吸収して膨らみ、腸を刺激して蠕動運動を促す大切な仕事をします。けれど腸の弱い人(腸の手術後など)や激しい便秘の人・下痢症の人が食べ過ぎると、不調を招くことも、、、。

大麦はふたつの繊維のバランスが絶妙だから、おなかに優しいのですね♪。

 

近年人気のもち麦も大麦の仲間です。

お米と同じく大麦にも「もち麦とうるち麦」があります。うるち麦である押し麦は少しパラっと炊き上がり、もち麦はモチっと炊き上がります。

食物繊維はというと、両者に含まれる不溶性食物繊維の量は大差ありませんが、もち麦の水溶性食物繊維は押し麦の1.5倍! 水溶性は優しく排便を促すので、カチカチ便秘さんや下痢症さんにはよりベターと言えます。

また最近注目の「もち麦の難消化性でんぷん (レジスタントスターチ)」は、腸内で食物繊維と同じような働きをして、短鎖脂肪酸を作り出すのが特徴です。短鎖脂肪酸は大腸だけでなく全身に力を与える貴重な存在です。もち麦人気の理由は、ここにもあるようです。

なお多くの人が気にするグルテンは、大麦には含まれていません。その点も腸に優しい点ということを付け加えておきますね。(グルテンと似た構造成分を含むため、小麦アレルギーの方は注意が必要)

さてここからは、大腸がんについて考えていきましょう。

日本ではこの50年間で、大腸がんになる人が「男性は約7倍、女性は約6倍」に増加しました。

部位別でがんになった人数を見ると、男性も女性も大腸がんは2位で、男女合わせると1位。しかもがんの部位別死亡数は、男性が2位で女性は1位です。2022年には、なんと5万人以上もの方が大腸がんで亡くなっています。
*出典元 国立がん研究センターがん情報サービス「最新がん統計」

なぜこんなにも大腸がんになる人が増えてしまったのでしょうか?
「がんになるものを食べたから」「食事が欧米化したから 」などなど様々なことが叫ばれていますが、そのひとつに大腸がんリスクを下げる(可能性)「食物繊維摂取量の激減」があります。
日本人が野菜を食べる量はたしかに減っています。が、じつは激減はしていません。

激減しているのは「雑穀を含む穀物からの食物繊維」。
1955年と2015年を比較すると、穀物からの食物繊繊維はなんと約7gも減っているんです!!
それと反比例するように大腸がんが増えていることから、ふたつの関係が研究されています。

そのなかで注目されたのが、先ほども出てきた「難消化でんぷん(レジスタントスターチ) 」。大麦に多く含まれる成分でしたね♪
日本人は炭水化物を分解する腸内細菌(ブラウディア属の菌)が特別多いそうで(=日本人の腸に穀物があっている証拠) 、この菌が難消化でんぷんをエサにして、私たちに有益な短鎖脂肪酸をセッセと作り出すとのこと。短鎖脂肪酸は大腸粘膜を保護し、大腸の活動エネルギー源となり、腸内環境をよくして大腸を正常に機能させます。もちろん穀物の食物繊維も力を発揮!!
結果、大腸がんの予防に繋がるのではないかと考えられています。

戦中戦後は白米不足のため、麦ご飯を食べるのが当たり前でした。当時は大腸がんが少なかったことから、押し麦(大麦)の食物繊維と難消化性でんぷんが、日本人の腸の健康を支えてきたことは間違いないでしょう。

けれど残念ながら、近頃ますます美容や健康のために穀物を食べる量が減っていますね。おなかの持病や不調を抱える人がとても多いのも、穀物の食べ方と関係があるように思います。

「腸にいいことづくめの大麦」を、食べない手はないですよね?

もし麦ご飯を毎日いただくのがしんどければ、(いまは私もしんどいです・笑) 、週に一度ほど大麦を美味しくたっぷりといただくのがおすすめですよ。 おなかの調子が整うはず♪

最後に大麦を美味しくたっぷり食べる方法を紹介しますので、ぜひお試しくださいね!!

麦はよく洗う

押し麦も、もち麦も、炊飯前によく洗うとヌカが落ちて美味しくなります。精麦してからの時間が長いとどうしてもヌカ臭さが出てきます。(お米と同じですね)

プチっとサラっとした食感を生かすなら、なんといってもお寿司。

押し麦の食感を生かすなら、酢飯がおすすめ

お米3でごはんを炊いて酢飯を作り、好みの具をミックス。押し麦の効果でべチャつきのない、おいしいお寿司ができますよ。おにぎりにしても美味。

モチモチっとした食感を存分に楽しむなら、100%もち麦ごはんを冷汁で。

もち麦の食感を楽しむなら、もち麦冷汁がおすすめ

味噌を水でといて味噌汁の濃さにして、ちりめんじゃこと野菜、好みで薬味と豆腐を加えます。次に、たっぷりの水でもち麦を17-18分ふっくらと茹で、ザルにあげてサッと水洗い。茹でたてのもち麦に汁をかければ、冷汁完成です。冬は熱いお味噌汁で作ってもGood。

外皮を残し精麦しているため茶色っぽい色をしています。匂いのクセなく、食感はモチ+プチっ♪
外皮の栄養も食べられるので、色が気にならなければお試しを。

大麦をおいしく食べて、みんなで腸を健康にしましょう!!

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