小麦の基礎知識
小麦の種類
秋まき小麦・春まき小麦
日本の小麦の多くは、9月頃に種をまき、7月下旬~8月上旬頃に収穫する「秋まき小麦」ですが、北海道には4~5月頃に種をまき、8月中旬頃に収穫する「春まき小麦」もあります。
春まき小麦は、国産小麦の中ではパン作りに向いています。しかし、秋まき小麦に比べると生育期間が短いため収量が少なく、また、収穫期が雨の多い時期と重なるため、作柄や品質が安定しにくいという欠点もあります。パン用の品種では、春まき小麦よりも収量が多い秋まき小麦の新種も誕生し、各地域の特産として広まりつつあります。
硬質小麦・中間質小麦・軟質小麦
小麦は「グルテン」というたんぱく質の含量が多い順に、「硬質小麦」「中間質小麦」「軟質小麦」に分けられ、それぞれは製粉されて「強力粉」「中力粉」「薄力粉」になります。
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硬質小麦
たんぱく質の含有量が多く、粘りや弾力性が高いため、パン、ピザ、中華麺、餃子の皮など、さまざまな用途で使用されます。
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中間質小麦
たんぱく質の含有量は中くらい。ほどよい硬さで、粉にして水でこねた時にのびがよく、乾麺やゆで麺に使われます。
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軟質小麦
たんぱく質の含有量は少なく、適度にやわらかいため、天ぷらやケーキ、ビスケットなどのお菓子づくりに適しています。
硬質小麦の一種、
デュラム小麦のセモリナ粉(強力粉)
デュラム小麦は硬質小麦の一種で、その粉は「セモリナ粉」と呼ばれています。硬質小麦の中でも弾力がとても強く、主にパスタやマカロニに使われます。海外品種のデュラム小麦は、成熟期が遅く、日本では収穫期が梅雨に重なるなど、国内での栽培は難しいとされてきました。しかし、2016年に国産品種の「セトデュール」が誕生。温暖で収穫時期に雨量が少ない瀬戸内地域で栽培されるようになりました。
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デュラム小麦
柔軟で弾力性が強いグルテンを豊富に含み、加工するとシコシコとコシのある食感になるため、パスタ類などに使われます。
小麦粉の種類と特徴
小麦粉の種類はたんぱく質の含有量によって異なり、一般的には次の3つに分類されます。含有量が多いものから、強力粉、中力粉、薄力粉と分けられます。そのほかにも、グルテンの量や質にもそれぞれの特徴があります。
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強力粉
硬質小麦を原料とし、グルテン含有量が多く、粘り気が強い特徴があります。粒子は粗めでパンやピザ、中華まんの生地などに使われます。
タンパク質量
11.5 ~
13.0% -
中力粉
中間質小麦や軟質小麦を原料とし、グルテン含有量や粘り気、弾力性はほどほど。うどんや生パスタ、お好み焼きなどに適しています。
タンパク質量
7.5 ~
10.5% -
薄力粉
軟質小麦を原料とし、グルテン含有量が少なく、粘り気が弱い特徴があります。粒子が細かく、お菓子や天ぷらの衣などに使われます。
タンパク質量
6.5 ~
9.0%
その他の小麦粉
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全粒粉
全粒粉は、小麦の殻まですべて一緒に挽いて粉状にしたもので、別名グラハム粉ともいいます。小麦の表皮には、食物繊維、たんぱく質、カルシウムなどが含まれているので、栄養価も高くなります。香ばしい風味で香りが高く、食感はしっかりしています。嗜好性が高まった現代にぴったりの食材で、今後もますます需要の広がりが期待できます。
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デュラム・セモリナ
硬質のデュラム小麦を粗挽きにした小麦粉のことです。胚乳部が黄味がかっているため、小麦粉も薄黄色をしているのが特徴。パスタ用の小麦粉として多く利用されています。
小麦の成分・
栄養バランス
小麦の小さな粒の中には、私たちの健康を支える多種多様な栄養が含まれています。
また、グルテン量が異なる小麦を使い分けることで、さまざまな調理に使用できます。
小麦の栄養とは
小麦粒は、「胚乳」「表皮」「胚芽」の3つの部位で構成され、それぞれに異なる栄養が含まれています。最も多くの部分を占める胚乳に含まれるのが糖質とたんぱく質で、私たちが体を動かすうえでのエネルギー源となります。また、表皮には腸のぜん動運動を促す食物繊維や赤血球の材料となる鉄が含まれます。胚芽には、ビタミンB1やB6が含まれ、これらは糖質やたんぱく質、脂質など、ほかの栄養の代謝をサポートする働きがあります。
小麦の栄養素
可食部100gあたり | エネルギー | たんぱく質 | 鉄 | 食物繊維 | ビタミンB1 | ビタミンB6 | ナイアシン |
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国産小麦 玄殻 | 329 | 10.8 | 3.2 | 14 | 0.41 | 0.35 | 6.3 |
薄力粉(1等) | 349 | 8.3 | 0.5 | 2.5 | 0.11 | 0.03 | 0.6 |
中力粉(1等) | 337 | 8.3 | 0.5 | 2.8 | 0.1 | 0.05 | 0.6 |
強力粉(1等) | 337 | 11.8 | 0.9 | 2.7 | 0.09 | 0.06 | 0.8 |
出展:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より
小麦の構造
- 胚乳
- 全体の約8割を占め、この部分が小麦粉になります。全身に作用する多糖類を含んでいます。
- 表皮
- 「ふすま」や「ブラン」とも呼ばれ、食物繊維やマグネシウム、鉄分、亜鉛などを含みます。
- 胚芽
- 小麦粒の2%ととても小さな部位。脂質、たんぱく質、各種ミネラルやビタミンを含みます。
小麦の栄養素をもっと知る
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不溶性食物繊維
水に溶けにくい性質があり、水分を吸収して膨らみ、便をかさ増しすることで腸を刺激して、便秘の予防・解消を促します。小麦の表皮に多く含まれます。
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鉄
必須ミネラルの1つで、血液中のヘモグロビンの一部となり、全身に酸素を運びます。また赤血球の材料となり、鉄不足による動悸やめまいの予防に役立ちます。
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糖分(でんぷん)
光合成によって作られる炭水化物で、活動のエネルギー源となります。でんぷんは加水した状態での加熱や冷却で形態が変わり、食感などに大きく影響します。
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ナイアシン
ビタミンB群の仲間で、糖質、脂質、たんぱく質からエネルギーを作り出します。また、皮膚や粘膜の炎症を防ぐことを助けたり、アルコールの分解、血行促進にも寄与するといわれます。
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ビタミンB1
胚芽に多く含まれ、ぶどう糖などの糖質をエネルギーに変換するために必要な栄養素です。疲労回復を助けたり、神経や脳を正常に保つのに役立ちます。
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ビタミンB6
酵素の働きを助ける補酵素としてたんぱく質や脂質の代謝をサポート。丈夫な皮膚や粘膜、髪、歯、爪などを生成するセロトニンなどの神経伝達物質を合成します。
小麦ができるまで
の工程
小麦の加工工程
小麦から小麦粉ができるまでの流れです。
たくさんの工程を経て、小麦粉が完成しますが、消費者の方の元へ安心安全な小麦粉を届けるために、工程には、さまざまな工夫がされています。
麦の栽培技術
品質の向上に向けた栽培技術の導入
雨の多い日本において湿害対策や土作りなど、品質向上に向けた栽培技術の導入に
積極的に取り組み、消費者の求める麦づくりの実現を目指します。
大麦の基礎知識
大麦の種類と特徴
大麦はビールや味噌などに利用されるほか、麦ごはんとしても広く利用されています。外皮が取れにくい「皮麦」と、外皮が取れやすい「はだか麦」があり、それぞれに「二条種」と「六条種」があります。一般的に二条種の方が粒が大きいとされています。さらに、粘りの少ない「うるち性」と、もち米のように粘りが強い「もち麦」に分けられます。
大麦の種類と特徴
二条大麦と六条大麦の違い
二条大麦と六条大麦とでは、穂についている実の列数が異なります。 穂を上から見ると二条大麦は2列のみに、六条大麦は6列すべてについています。
国内の主な生産地
大麦は寒冷・乾燥に強い植物で、日本ではほぼ全国で栽培されています。主食用の大麦は100%国内で生産され、近年では食感がよく栄養価の高い品種が次々と誕生しています。二条大麦は全国的に生産され、六条大麦は主に東北・北陸・関東で生産され、はだか麦は主に四国・九州地方で生産されています。
二条大麦(大粒大麦)
六条大麦(小粒大麦)
はだか麦
出典:農林水産省 令和5年産麦類(子実用)の都道府県別収穫量及び割合(全国)
加工によるタイプの違い
大麦にはうるち性、もち性があり、それぞれ性質が異なります。うるち性大麦はそのまま米と一緒に炊くと硬く、食感が悪くなるため、蒸して押しつぶすなどの加工を行います。一方で、もち性大麦はそのまま炊いてもおいしいため、加熱したりつぶしたりせずに、精白のみを行う加工法があります。他にも、見た目や調理のしやすさなどを目的に、様々な加工方法があり、各大麦の性質によって使い分けられます。
大麦の栄養価と効能
大麦はビタミンB群やミネラルが豊富で、不溶性(水に溶けない)・水溶性(水に溶ける)の2種類の食物繊維がバランスよく含まれています。特に水溶性食物繊維の「β(ベータ)-グルカン」は、機能性表示食品の関与成分として認められており、様々な健康効果が期待できます。
- おなかの調子を整える
不溶性食物繊維は、胃腸内の水分を吸収しながら、便のカサ(体積)を増やし、腸のぜん動運動を促して排便をスムーズにします。また、β-グルカン等の水溶性食物繊維は、腸内環境を整える役割を持つ善玉菌を増やす助けをします。 - 生活習慣病を予防
水溶性食物繊維は、体内で水分を吸収するとゼリー状になり、胃腸内の食物を包みながらゆっくり移動し、消化吸収を緩やかにします。この働きにより、血糖値の急激な上昇が抑えられます。また、 β-グルカンは血中コレステロールの正常化を助け、脂肪吸収を抑える働きをするため、糖尿病や高脂血症などの予防にも有効です。 - 健康的にダイエット
大麦は胃腸をゆっくりと移動しながら消化されるため、満腹感が持続し、間食や食べ過ぎを防止します。また、血糖値の急上昇や脂肪吸収も抑えられ、肥満予防に役立ちます。
⾷物中に含まれる⾷物繊維の量(可⾷部100g当たり)