コラム〜と麦

他分野で活躍する各業界のエキスパートが其々の目線で麦を語ります。

肉汁がうまい「武蔵野うどん」 を訪ねて。

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関口 将 有限会社ピークロード(マーケティング・プランナー|ワークショップ・デザイナー|フォトグラファー)

あなたが好きなご当地うどんは?

今回のテーマは、麦ど真ん中のメニュー「うどん」。
わたしもいろんな旅先でうどんは食べるのですが、全国津々浦々に愛着にあふれた「ご当地うどん」がありますね。
あれも美味い、これも美味いうどんですが「あなたが好きなご当地うどんは?」と聞かれたら、どう答えますか?
そんな興味が湧いたので、インターネット調査で掲示板調査をしてみました。

うどんわたしの本職、マーケティングの世界では、ある程度の「仮説」をたてて分析を進めるのが定石なわけでありまして、「たぶん○○うどんとか、◯◯うどんが、上位にくるのではないかな」と、それなりに予想はするわけです。
ですので、まあ予想通りといえば、予想通りなのですが…
こんなダントツに讃岐うどんが第1位とは…。

「うどん県」のPRはもちろん、都内に住んでいても、讃岐うどんのチェーンはほんとに身近。ある意味、国民食になるつつあるのですね。それにしても全国調査でほぼ半数の人が「ご当地うどん」として投票するとは、よほどみなさん「讃岐うどんラブ」なんですね。

さらにしつこく、調べてみました。

続いては、インスタのハッシュタグ検索。
最近では検索サイトやグルメポータルで調べるよりも、インスタのハッシュタグ検索でお店を調べることの方が主流のようですね。確かに一般の人が撮影した写真の方が、お店の撮影した写真よりもリアルですからね。

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「福岡のうどん」と「関西のうどん」

ああ、やっぱり讃岐うどんがダントツだ。ガリバーだ、モンスターだ。31万件!
こうなってくると、その他の「ご当地うどん」に目が行くわけです。
グラフをよく見てみると、讃岐うどんの対抗馬としては、稲庭うどん、伊勢うどん、ほうとう、味噌煮込みうどんの4つが浮かび上がってきています。
この4つのうどん、たしかにわたしも食べたことある。

うどんの姿、食べ方、味も、思い出せる。
ですけど「じゃあ、今日のランチは伊勢うどんにしよう!」って思っても、東京に住んでいたらなかなかお店はみつからないですよね。
そういう意味では、この4つのうどんはその場所に行って食べるという本来の「ご当地グルメ」の代表格といえるかもしれません。

一方で、讃岐うどんのお店は、わたしが今いる渋谷では徒歩で行けるところですでに3店は思い付きます。もはや「ご当地グルメ」ではなく「国民食」ですね、殿堂入り決定!

もうひとつ注目したのが、「福岡のうどん」「関西のうどん」の2大勢力。
地名がはっきりとしたブランドうどんではないので、ハッシュダグ検索では弱いのですが、うどん文化としては無視できない2つのエリア。

「福岡のうどん」。
じつは、わたし大好きです。出張で福岡に行った際には必ず食べます、ごぼ天うどん。
太めでふにゃふにゃな麺。コシが命のうどんとは、きっぱりと一線を画す、というか全く別の食べ物にもすら思えてくるあのコシのなさ。

そうあのコシのなさがいい。

今回の調査では、好きなご当地うどんに添えて「なんで好きか?」までアンケートに書き込んでもらいましたが、「福岡のうどん」推しの方の意見は、こんな感じです。

ふにゃふにゃの麺甘い汁が大好き。
・麺にコシはなくふにゃふにゃした感じが個人的に好きです。
・やわ麺とごぼ天のサクサクがおいしいです。
・うどんは、柔らかくてふにゃふにゃだけど、出汁の味にごぼ天が合わさって、美味しいんですよ。
うどんにコシは必要ない。特に東筑軒のかしわうどん。

まったく同感!

※ちなみに最後の東筑軒推しの方は「福岡のうどん」ではなく「北九州のうどん」と書かれていましたが、分析処理上「福岡のうどん」とさせていただきました。名誉のため。
北九州やけん。

「関西のうどん」。
こちらは、お出汁とおあげがたまらない美味しさ。
いろんな美味しいものがあるので、関西に行くと悩む昼飯ですが、呑んだ翌日にはこれですね、これ。
ちなみに関西うどん推しのみなさんの意見はこちら。

出汁が香るところが好きです。
・出汁が上品ですごく美味しい
・体調が悪いときに母が作ってくれたきつねうどんの味

もはや、「出汁」の文化ですね。
でじるじゃないですよ、だしと読みましょう。

その他のうどんに対する意見も気になるので、AIによるテキストマイニング分析でうどん勢力図をつくってみました。

chart

昭和63年から変わらぬ味

讃岐うどん!コシっ!
稲庭うどん!喉越しっ!
伊勢うどん!モチっ!
味噌煮込みうどん!コクっ!

など、文字の近さでそれぞれの関係性をみていると、いろいろ見えてきます。

そんな中で、ちょっと気になるうどん、みーつけた!
勢力図の真ん中のちょい上にあるやつです。

「武蔵野うどん」。

武蔵野とは、武蔵野台地のこと。
東京都と埼玉県の西部、国木田独歩の随筆「武蔵野」で知られる水と緑の自然豊かな丘陵地。
調べてみると、土質や水利の関係で明治時代には小麦の生産農家さんが多かったようです。
冠婚葬祭などで、地元の小麦粉でうどんを打ってお客様にふるまうようになったのが「武蔵野うどん」の始まり。まさに、食の文化です。

そういえば、なんだか最近テレビで見たな。ご当地グルメの紹介で。
わたし、埼玉県出身なのですが、自覚して「武蔵野うどん」を食べたことなかった。
気になる…。

で、今回の調査で「武蔵野うどん推しの意見」を覗いてみると…。こんな感じのコメントが書いてあります。

・ばあちゃんの家で食べてるような、家庭的な感じが良い
・太くてしっかりとした麺、肉汁つけ麺が美味い。

ばあちゃん、家庭的、太くてしっかりとした麺。

なにかこう、田舎のばあちゃんが 葺き屋根の下でうどんをこねて、湯気が上がる大きな鍋 にばらばらと麺を投入している姿が目に浮かびます。
ああ、はら減ってきた。
と、なったので武蔵 うどんのお店をハッシュタグ検索して、行ってきました。 実食は大事。事件はいつも現場で起きています。
※ お店の最新の情報はご自分でお調べください。

国分寺 甚五郎
東京 国分寺市本町3-12-1
JR中央線「国分寺」駅より徒歩5分

お店のホームページを拝見するとこうあります。
武蔵野うどんを守り続け昭和63年から変わらぬ味。

こうも書いてあります。
「田舎のおばあちゃんが作ってくれた」そんな素朴な味わいを当店でお楽しみいただくこと ができます。あぁ、わたしが妄想したことがそのまま書いてある。
そんな味を求めて電車に乗って、行ってみました。

店構え◯、いや◎。
「昭和63年から変わらぬ味」というお店の売り言葉を裏切らない、なんとも昭和な香り。

国分寺駅北口をそぞろ歩いて5分。迷わず暖簾をくぐりました。
いらっしゃいませ!という威勢の良い出迎えの声でテーブルにつき、出てきたおうどんはこちら。

どうですか。でてきたうどんの姿もわたしの妄想を裏切らない、昭和の風情。

太めでしかも手打ち感にあふれた素朴な麺の姿、使い込んだ漆器のおわんの肉汁。
豚バラの甘さが広がる肉汁に太めの麺をどかっと浸してばくばく食いました。

武蔵野うどん。くせになりそうです。

マーケティングデータとグルメ散歩で綴る「小麦と食文化の話」。
さてさて、次はどんな小麦を食べに行きましょうか。

では、また。

2021.7.31
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