コラム〜と麦

他分野で活躍する各業界のエキスパートが其々の目線で麦を語ります。

ご当地小麦を探して、地産地消しよう。

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関口 将 有限会社ピークロード(マーケティング・プランナー|ワークショップ・デザイナー|フォトグラファー)
小麦のコラムを書き始めた時のこと。
とにもかくにもまずはパンケーキを作って食べてみようということになり、実家近くのスーパーでパンケーキミックスを探していました。

たくさんのパンケーキミックスが並んでいる商品棚に「東京パンケーキミックス」というパッケージをみつけて、どんな商品なんだろうと手に取りラベルをみると…

「東京都在来種柳久保小麦使用」と書いてある。
へぇー、東京の「在来種小麦」なんだー。

そう、地産地消のお話です。

ぼくの相方の出身は「東京都東久留米市柳窪」。
その「柳久保」の小麦。こんな足元にご当地、しかも東京都在来種の小麦があるとはちょっと驚きでした。

東久留米市は実家ということもあり、近所を散歩する機会がたくさんあります。東京の原風景でもある武蔵野の雑木林や、花桃などの鑑賞樹や芝生の栽培、栗畑、キャベツ、ネギ、小麦などの畑と、長閑な東京郊外。
そんな長く親しんだ場所なのに、見落としていることもあるものですね。

で、その「柳久保小麦」というのがとても気になって、インターネットをググってみたら、うどん、ラーメン、かりんとうなど、さまざまな地産地消の小麦商品があることまでがわかってきました。
なんとも、すばらしいことではないですか。

JA東京中央会さんのホームページの「江戸東京野菜」の紹介ページには、以下のような説明がありました。(以下、抜粋)

柳久保小麦
江戸時代の嘉永4年(1851)、現在の東久留米市柳窪の奥住又右衛門が、旅先から一本の穂を持ち帰って育て、その中から優良な小麦を見つけ出しました。良質の小麦粉がとれ、うどんにすると非常においしく香りがよくて人気があり、第二次大戦前まで東京各地や神奈川県など近隣県でも栽培されました。しかし、戦時中の食糧増産のなかで、収量が少ないこと、倒れやすいことなどから、姿が消えて「幻の小麦」となりました。
昭和の終わりに、四代目にあたる奥住和夫氏が熱意をもって、農水省生物資源研究所のジーンバンクに保存されていたタネを300粒譲り受けて、栽培を復活しました。

地産地消でご当地小麦を探してみよう。

ほんとにすばらしい小麦復活ストーリーですよね。
栽培復活の功労者、奥住さん、ありがとう。

実際にこのパンケーキミックスでパンケーキをつくって食べてみたのですが、国内産小麦だけあって、とってもモチモチ感が強く、黒糖がミックスされていてほどよい甘さ。
バターとメープルシロップで美味しくいただきました。

柳久保小麦の製品のように「地元で産した物を地元で消費すること。」を地産地消と呼びますね。地産地消という言葉の発祥には諸説あるようですが、どうやら1980年代に全国各地の農業関係者の間で広まっていった言葉といわれているようです。
地産地消によって、食料や農業の分野で消費者の理解と関心が高まることで、地域での連携や活性化が生まれ、ひいては食料の自給率も向上する。
消費の理想って、本来こういうものなんじゃないかなと思います。

地産地消によって製品の輸送距離も短くなり、排気ガス削減など地球環境の負荷を軽減することにも役立ちます。
「地元で産した物を地元で消費する。」というたったひとつの行動ですが、今日ではSDGsという視点でみてもさまざまな恩恵があることが認識されてきました。

ちょっと考えてみただけでも「地産地消」という消費行動で効果があるSDGs目標には以下のものがありそうです。

7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに

13:気候変動に具体的な対策を

地元で食物などを消費することで運搬によって発生するCO2の削減が達成できて、7と13に貢献ができます。

15:陸の豊かさも守ろう

地域で育てたものを、その地域で消費することで、陸の資源の保護にも繋がります。

9:産業と技術革新の基盤をつくろう

もちろん、「地産地消」は地域の農業を支える大きな推進力でもありますね。

SDGsはもちろん、地域の活性化、雇用などを含めて、人、社会、地域、環境まどに配慮した消費行動のことを最近では「エシカル消費」と呼びます。
エシカルというのは、倫理的とか、道徳的とかという意味。
利己的ではなく、エシカル消費のような利他的消費行動ってほんとに大切。

ここで取り上げたSDGs目標は、ぼくが個人として気づいたものですが、その他にも「地産地消」という消費行動をきっかけとしてさまざまなSDGs目標へのつながりが生まれるかもしれません。

そこで、SDGsに役立ついくつかの消費行動についてのアンケート調査を行ってみました。

質問
自分自身が積極的に取り組めると思える
SDGsに役立つ消費行動を教えてください
(2022年12月:全国男女200名)

フェアトレード商品を購入する。

リサイクル、リユース商品を買う。

地産地消を心がける。

さまざまあるSDGsアクションの中でも「地産地消」は「リサイクル、リユース」以上に身近な行動なんですね。

と、少し真面目なお話でしたが、SDGsはもちろん、世界の食糧事情なども考えると「国内産小麦」を積極的に食べるって、とっても大事な時代だと思うんです。

ひとつの「よき行動」は社会を変えていく起点にもなる。
さあ、地元で国内産小麦の「美味しいもの探し」を始めましょう!
では、またいつか。

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