国産麦・大豆取組事例レポートin愛知県

国産大豆の利用拡大で生産者を応援したい豆腐メーカーが新商品開発を加速化

食料自給力確保の観点から国産大豆の安定供給・利用拡大が求められる中で、豆腐事業を主軸としてきた愛知県の食品メーカーが、大豆を活用した商品開発に積極的に取り組んでいる。「国産原料へのこだわり」をもった背景や、商品化に至る過程で直面した課題、今後の展望について、株式会社おとうふ工房いしかわ 取締役 専務執行役員の石川 諒さんに話を伺った。また、おとうふ工房いしかわの協力パートナーである、石川農園代表 石川 智一さん、スーパーヤオスズ株式会社 店長 山口 智伊さんにも話を伺った。

子どもにも安心して食べさせられる商品を作りたい

株式会社おとうふ工房いしかわ 取締役 専務執行役員
石川 諒 さん

おからを使ったスイーツがロングセラーに

弊社は1991(平成3)年に創業したのですが、ちょうどその年に、現代表に子どもが生まれました。子育て中に離乳食を食べさせているときに、「自分の子どもに安心して食べさせられる豆腐を作りたい」と強く思い、国産大豆100%の豆腐作りをスタートさせました。国産大豆とにがりを使い、安全・安心に食べられることはもちろん、長く食べ続けていただけるように、おいしさにもこだわりました。できる限り近隣の農家さんが作った大豆を使い、地産地消を目指したいとも考えていました。そんな想いから、弊社は生産者さんと顔の見える交流を大切にしてきました。実際に原料の栽培に携わっている方たちから土のこと、水のこと、天気のことなど、大豆を育てるためのさまざまな状況を聞くと、その苦労が身に染みて感じ、そんな風にして作っていただいた原料を無駄にせず、おいしい豆腐に加工して販売する責任があるということを改めて痛感しました。生産者の方たちが安心して大豆栽培を継続するためには、需給バランスが安定していなければなりません。そのために、弊社は大豆の新しい食べ方を広め、さらに新しい商品を生み出し、大豆の消費量を増やすことも積極的に行いました。

豆腐を作る際にはおからが出ますが、これも生産者の方たちが大切に育てた農産物の一部。中には廃棄せざるをえないお豆腐屋さんもありますが、弊社としてはおからも有効活用したいと考え、30年前に「きらず揚げ」というお菓子を開発しました。国産大豆100%の自家製おからと、国産小麦を使って作るのですが、少し硬い食感と素朴な味わいが人気となり、当社のロングセラー商品となりました。今ではベーシックなしおテイストだけでなく、黒砂糖やマヨネーズ、黒糖きなこなど8種類のテイストを揃えています。さらに、もっとおからを有効活用したいと、「おからクランチ大豆ミート」の開発にも取り組みました。大豆ミートを製造できる機械を持っているメーカーで国産おからの有効活用に賛同し、協力してくれる会社を探すことができました。

補助事業があったからプロモーションも実現

開発のテーマはおからの有効活用。国産大豆を圧搾製法で搾油した脱脂大豆と、おからパウダーを配合した大豆ミートを、2023(令和5)年に生み出しました。何度も試作品を作って試食を繰り返し、国産おから100%で栄養豊富、臭みが少なく食感の良い商品ができ上がりました。使用する際に水戻しをしなくてよいことも特徴で、消費者や料理人の方たちに喜ばれています。
その開発に際して、「麦・大豆利用拡大事業に係る新商品開発等事業」(以下、「補助事業」という)を利用できたことは、とても助かりました。おかげで開発に注力することができたので、納得のいくおいしい商品を世に送り出せたと思っています。

おからの有効活用のために新商品を作ったのはよいのですが、利用拡大にも取り組むことが必要でした。プロモーションとして大豆ミートを使ったレシピを開発し、レシピブックにもまとめ、2冊発行しました。消費者の方にはおからクランチとレシピ本を一緒に渡して自分で作ってもらったり、料理人や飲食メーカーの方には試供品をお渡ししてご自身のメニュー開発にも役立ててもらいました。今まで着手できなかったプロモーションにも補助事業の支援のおかげで取り組むことができたのも、価値あることでした。おかげで、「おからクランチ大豆ミート」は話題となり、「愛知ブランドイノベーションアワード2024」や、「愛知環境省2025」の優秀賞を獲得することができました。市場に私たちの商品が受け入れられたことは、本当にうれしかったです。

地元農産物を使った「風土市場まめぞう」をオープン

国産大豆の安定供給はまだまだ改善されたわけではありません。以前にも冷害による不況や海外産の輸入が滞ったことにより国産大豆の価格が上昇し、品自体が手に入りにくくなるなど、外的要因の影響を受けやすいという現状があります。私たちは国産100%をうたっているため代替品がありませんから、仕入れを安定的に行っていくことは、大きな課題です。だからこそ、私たちメーカーも生産者の方たちと向き合い、実際にみなさんが育てた大豆で作った料理を食べていただき、自分たちの大豆がどんな形で消費者の方たちに届くのかを知ってもらうようにしています。情報交換を行うことで品質の改善に結びつくなど、より良い大豆づくりに向けて力を合わせています。現在イソフラボン含量も多く、甘みの強い「ゆきぴりか」を使用していますが、育種段階から、実需者として試験に協力してきました。
 また日本の農業を応援したいという理念から、大豆のみならず、小麦の利用拡大のために、とうふドーナツも開発し、手応えが得られたので生産ラインも新たに確保しました。健康志向やヘルシーな食品を好む市場を踏まえて、ミルク寒天やパン、プリンなど、幅広い年代の方に国産の大豆や小麦、乳、卵を原料とした料理やスイーツを食べてもらうように動きを加速させています。
2025(令和7)年7月には、愛知県内にある刈谷ハイウェイオアシスに、米・麦・大豆を中心国産の農産物を使った出来立ての商品を販売するコンセプトショップ「風土市場まめぞう」をオープンしました。日本の農業を応援しながら、今後も安全・安心な食品を提供してまいります。

工場には大型機械が並ぶ

匂いもほとんどなく、
使いやすいと好評のおからクランチ大豆ミート

生産者の方たちと向き合い、実際にみなさんが育てた大豆で作った料理を食べていただき、自分たちの大豆がどんな形で消費者の方たちに届くのかを知ってもらうようにしています。情報交換を行うことで品質の改善に結びつくなど、より良い大豆づくりに向けて力を合わせています。現在イソフラボン含量も多く、味わいの良い「ゆきぴりか」を使用していますが、この品種改良にも、メーカーとして試験に協力しています。
また日本の農業を応援したいという気持ちから、大豆と小麦の利用拡大のために、とうふドーナツも開発し、手応えが得られたので生産ラインも新たに確保しました。健康志向やヘルシーな食品を好む市場を踏まえて、ミルク寒天やパン、プリンなど、幅広い年代の方に国産大豆や小麦を原料とした料理やスイーツを食べてもらうように動きを加速させています。農工商連携をより強化し、企業、メーカーも積極的に大豆の利用拡大に寄与していきたいと考えています。2025(令和7)年7月には、愛知県内にある刈谷ハイウェイオアシスに、地元の農産物で作った商品を販売するコンセプトショップ「風土市場まめぞう」をオープンしました。日本の農産物を応援しながら、今後も安全・安心な食品を提供してまいります。

ハイウェイ内にできた風土市場まめぞう

地元の方たちが指名買いをする人気の豆腐商品

地元のおいしい企業を
応援したいからスタート

元々は八百屋からスタートした会社で、今年で創業78年になります。現在店舗は、刈谷市や知立市に3店あります。うちがおとうふ工房いしかわさんと取引を始めたのが30数年前と聞いています。「地元で良いものを作っている会社の商品を販売したい」ということで、お声をかけさせてもらいました。当初は、お豆腐商品を数点並べていて、お客さんもおとうふ工房いしかわさんのことはよく知っていますから、指名買いをする方たちも多くいたそうです。現在では、平台の冷蔵庫をおとうふ工房いしかわさん専用の販売コーナーにして、たくさんの商品を並べさせてもらっています。うちでは「きらず揚げ」が大人気で、ロングセラー商品です。国産大豆100%使用ということで、安心して買われていくお客さんも多いので、今後もおいしくて安心できる商品をどんどん生み出していってほしいと思っています。

スーパーヤオスズ株式会社店長
山口 智伊 さん

店頭にはおとうふ工房いしかわの
商品が数多く並ぶ

おいしい豆腐作りのために高品質の大豆栽培と安定供給を目指す

いしかわ農園 代表
石川 智一 さん

子どもたちに安心して
食べてもらえる商品を

当園では、稲、麦、大豆、チンゲン菜を手掛けていて、稲、麦、大豆は二年三毛作でまわしています。大豆は24haほどで栽培をしていて、昨年は単収で3.5俵(約210kg/10ha)収穫ができました。

おとうふ工房いしかわさんとは、父の代からのお付き合いで、大豆の取り引きはそのころからさせてもらっていました。おとうふ工房いしかわさんの作る豆腐は、国産大豆100%使用ということで金額は少し高くなりますが、その味の良さから、昔から地元の人気商品でした。何より、地産地消を心がけていて、近くにこんな素晴らしい企業があることを誇らしく思っていました。地域の会合などで石川さんとお会いしていましたが、いつも元気があってモノづくりに一生懸命な姿を間近で見てきて、信頼できる人だなという印象があったんです。ですから、取り引きを長く続けていく中で、「こんな新商品を作りたいから、こういう特性を持った大豆ができないかな」と相談があれば、できる限り協力をして、高品質な商品づくりの一端を担うことができればと思っています。

そんな信頼関係を表すような取り組みがあります。実はおとうふ工房いしかわさんは、安城市のクラフトビールづくりにも協力されていて、地ビールを作りたいのでビール用の大麦を作れないかと相談されたのです。昔はうちでも大麦を作っていたので多少のノウハウはある。何より地域が元気になることだったらぜひ自分も取り組みたいと思い、ビール用の大麦づくりに挑戦しました。2023年に地元安城の地ビールDEN BEERが発売になったのです。4人でビール開発に取り組みましたが、自分もビールが大好きなので、完成したDEN BEERを飲みながら、石川さんとも地元を元気にするための取り組みについて、たくさん語ってきました。

その一環として、うちでは子どもたちに農業をどう守っていくか、また食料の大切さを知ってもらうための取り組みも行っています。田んぼアートがそのひとつで、大きな畑に色違いの稲でアートを表現。子どもたちと一緒に取り組んでいます。ほかにも実際に畑を貸して稲を育ててもらい、収穫までを体験し、そのお米を給食で食べてもらったりしています。
これからも、食の大切さを子どもたちに伝えながら、地元の方たちが誇れるおいしい豆腐が安定的に作れるように、石川さんとタッグを組んで頑張っていきたいと思っています。

石川農園さんの圃場

SHARE